裁判報告

Court Report

2022.05.16

解説

NHKとの債務不存在確認訴訟について【弁護士解説】

決直後の解説動画

この裁判のこれまでの経緯 
https://nhk-no.jp/court-report/report001/20220421//

護士解説

 裁判所は、判決の中で、NHKが訴外で割増金及び延滞利息を請求していないことから、わざわざ裁判手続きとしてNHKの債権が存在するかどうかについて確認す
る必要はないという判断をしました。

 しかし、権利・法律関係について紛争が発生したときは、ためらうことなく訴訟手続きによって解決しようという機運が醸成されることは、近代的な法治国家においては望ましいことです。

 また、裁判を受ける権利(憲法32条)という観点からも、紛争解決の場をできるだけ公的な場所で公正・適切に処理することが望ましいという観点からも、一般市民が訴訟という手段に訴えることに、裁判所自らが消極的姿勢を示すべきではありません。

 さらに、NHKが債権の存在を主張すれば、仮に実際には請求する意思がないとしても、主張された一般市民は、主張された債務の弁済のために資力を留保しておくことが事実上強制され、自己の財産全体に対する自由な管理処分権が妨げられることになります。

 もし濫訴を気にするのであれば、それは、個々の訴え提起について、不当な訴訟提起なのかどうかを訴訟上の信義則(民事訴訟法2条)に照らして判断していけば足ります。

 現代社会においては、予測可能性それ自体が経済的な価値を有しています。
 したがって、自己の法的地位に関して不明確な点があれば、その不明確性を除去して、そのことに起因するコストや損害の発生を未然に防止し、または最小限のものに留めるために、不明確性を除去することには、法的な利益があると考えるべきです。

弁護士 大瀧 靖峰